Paul Cutler

4月末、英国の退役軍人であり、歩く英雄として愛されるトーマス・ムーア大尉(Captain Sir Thomas Moore)は、4月30日に100回目の誕生日を迎える前に自宅の庭を 100 周歩き、 NHS (英国の国民保健サービス)の慈善団体のために 3200 万ポンドの寄付を集めました。『BBC breakfast』ニュースチームによる屋外放送は、 Sennheiser Digital 6000 の助けを借りて、音響エンジニアのポール・カトラー( Paul Cutler)氏によって実現しました。

大尉の誕生日の朝、世界中の何千もの人々が元戦車司令官にお祝いの言葉を送りました。この大々的なお祝いの席でトム・ムーア大尉は、ベッドフォードシャーの自宅から視聴者の惜しみない支援に感謝の言葉を述べました。BBC 、 ITV 、 ITN 、 Sky などのクライアントと 23 年以上、仕事をしてきた放送音響エンジニアのポール・カトラー氏は、その日のオーディオを担当していました。「BBCブレックファストでは、他にもいくつかの興味深い大規模な外部放送や特集を組んできました。」とカトラー氏は話します。「 この特定のプロジェクトは急速に勢いを増し、技術面でも課題が増加しました。」 カトラー氏の説明によると、『BBCブレックファスト』と『BBC ニュース』の両方の技術マネージャーと初めてズームミーティングを行った後、直ちに自宅を出てトム・ムーア大尉の家を訪れ、その午後にブリーフィングを行ったとのこと。

補聴器との干渉の課題


「私はこれを行ったのは、屋外放送の現場を実際に見て、安全な距離を維持しながらトム・ムーア大尉に会うためでした。」と、カトラー氏は続けます。「当時は、[ 屋外放送 ] の性質と複雑さから、必要な機材はかなり大規模なものであることが分かりました。それで Presteigne Broadcast Hire に電話しました。」 カトラー氏は Presteigne Broadcast Hire を知り尽くしていました。同社の製品在庫と高いサービス基準まで把握していました。「彼らが提供する機材は常に機能し、優れた状態であるという絶対的な信頼を持っています」と付け加えます。シニア PPU & RF レンタルマネージャーのダン・ソモギ氏(Dan Somogyi)と相談した後、カトリー氏は Presteigne の音響責任者のデヴィッド・ハンドレー氏(David Handley)と話しました。

「私たちは Sennheiser の Digital 6000 シリーズを使用することに合意しました」とカトラー氏は述べています。「この無線マイクが選ばれた理由は、100% 信頼できる性能が必要だったからです。」 また、レシーバーが活動元の近くにあるため、マイクは比較的短距離で局部的に動作する必要がありました。無線マイクの条件は「少ない方が良い」のです。

新型コロナ感染症による特別な状況


複数の周波数帯、IEM、トム・ムーア大尉の Bluetooth 補聴器が全てが近距離で局部的に電波を放っている時、多くの高出力は不要です。そのため、バッテリー消費と完璧に明瞭なオーディオ品質を兼ね備えた低出力が重要でした。" カトラー氏にとってもう 1 つの重要な要件は、無線マイクを直感的に使えるようにすることでした。「私の音響担当者であるジェイミー・ダン(Jamie Dun)が、この特定のマイクを使ったのは、その日が初めてでした。しかもこれは 700 万人を超える人々に視聴される生番組でした」とカトラー氏は語ります。「 エラーの余地は全くなかったので、マイクが非常に使いやすく、必要に応じて周波数やゲイン設定をすばやく簡単に変更できることが不可欠でした。」

安全な距離ガイドラインに従って、すべての出演者はマイクを自分自身に装着しなければなりませんでした。すべてが滅菌され、ダンがマイクロホンをテーブルに置き、出演者はダンの手本通り、マイクを自分自身にクリップで留めなければなりませんでした。「トム・ムーア大尉のお孫さんから 100 歳の大尉ご本人まで、出演者の年齢はさまざまでした」とカトラー氏は言います。「 これは、人間工学が非常に重要であることを意味します。マイクは小型で素敵でクリップで簡単に装着でき、頑丈で、極めて頑丈でなければなりませんでした !」 もう 1 つの重要な検討事項は、電池の寿命でした。一度マイクが出演者に装着されたら、電池を交換する方法がありません。「これは朝 6 時から 9 時までの生放送でした」とカトラー氏は続けます。「しかし、その前から多くのチェックを行う必要があったため、無線マイクは 5 時から使用されていました。長寿命の電池であることをあらかじめ知っておく必要がありました。これが、 Presteigne がデジタル 6000 を提案した別の理由です。」

その日の目録には、最大 12 時間のバッテリー寿命を持つ 8 個の SK 6212 デジタルミニボディパックと、2 個の SKM 6000 トランスミッターを使用する 6000 シリーズの10 チャンネルと 9000 シリーズ カプセルが含まれていました。4 本の Sennheiser MKH 416 マイクも提供され、これらはイギリス空軍の儀礼飛行用の環境音用マイクとして使用され、さらに2本の Sennheiser MKH 416 マイクは究極のスタンドバイとしてポールに取り付けられました。英国と世界の両方で大々的に盛り上がったこのストーリーは、技術的な故障が許されず、すべての機材を完全に信頼する必要がありました。「 D6000 が私たちにとって当然の選択でした」と Presteigne の音響責任者のデビッド・ハードレー氏は述べています。「優れた音質と強力な RF ワイヤレス伝送で知られているこの製品は、このような要求の厳しい生放送に最適です。さらに、最新のソフトウェア・アップデートでは、すでに混雑した環境でもより多くのチャンネルの使用を可能にするため、必要な場合には非常に便利です。」

「 Sennheiser でなければなりませんでした」とカトラー氏は述べています。「 マイクは完璧に機能しなければなりませんでした。なぜなら、技術的な問題が発生すればプログラムの創造的な感覚が失われ、ストーリーを伝える勢いが失われるからです。」 放送業界以外の標準とチームが当日ソーシャルディスタンス要件を守った方法を比較したカトラ―氏は、追加の予防措置を説明しました。「普段は、私はバンの中に座って制作作業に携わり、かなりオープンな環境でミキシングを行います」と説明します。「しかし現在の状況では、リスク評価は万全でなければなりません。私はオーディオ専用の別の車両をセットアップして使用し、無線ラジオマイクからのフィードを受信し、それを衛星トラックに送りました。屋外放送には、他の放送局からの RF 干渉のような課題が常にあります。幸いなことにその朝、BBC Breakfast が独占取材をしてくれました」。

国民的英雄としてのトム・ムーア大尉


トム・ムーア大尉は目覚ましい募金活動の成功例を受けて、名誉大佐と英国クリケットチームの名誉会員の地位を授与されました。人生の節目を祝うこの機会に、女王と首相からイギリス空軍の儀礼飛行と誕生日の祝福が寄せられました。翌月、トム・ムーア大尉はその募金活動に対してナイトの爵位を授与されました。カトラー氏は、今では英国の「護符」と呼ばれるトーマス・ムーア大尉に会い、寛大さと優しさの素晴らしい祝賀の一部になったことにどれほど感銘を受けたかを語ってくれました。「20年以上オーディオ業界で働いたことで、貴重なイベントに参加するまたとない機会が生まれました。この体験は、間違いなく、最も忘れがたいプロジェクトの 1 つになるでしょう」とカトラー氏は締めくくりました。「 このような心温まるストーリーが高品質のオーディオ機器のおかげで保存でき、またこの先長年に渡ってトム・ムーア大尉の記憶を留められることを大変嬉しく思います。」